「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」とは
DXハイスクールとは「高等学校DX加速化推進事業」の通称で、文部科学省が主導する支援事業の一つです。高校時代にデジタル・理数分野の教育を重視し、文理横断的・探究的・実践的な学びを強化することで、未来のデジタル人材を育成することを目的としています。そのために必要になってくる設備や人材にかかる費用を支援するものです。現在、日本の普通科高校では文系が多いのですが、政府としてはデジタル・グリーン等の成長分野の高度専門人材育成のため、理数系の学生を増やしていきたい狙いがあります。
補助対象の学校数・補助上限については2025年度概算要求で継続校が[1000校、750万円(重点類型の場合950万円)]、新規採択校が[250校、 1,000万円(重点類型の場合1,200万円)]となっています。
「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」との違い
似た取り組みで「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」があります。SSHは先進的な科学技術、理科・数学教育を通じて、生徒の科学的な探究能力等を培うことで、将来社会を牽引する科学技術人材を育成するための取組です。2024年度は225校が文科省から指定を受けています。
大学入学前の段階から理数系分野の人材育成の強化を行うための費用の支援という点では似ていますが、SSHが幅広い科学分野の人材育成に力を入れているのに対し、DXハイスクールはデジタルに重点を置いて環境の整備を行うことで文理横断的・探究的・実践的な学びを全国的に広げることを狙いとしています。採択校数も2024年度は申請校数1097校に対し採択校数1010校となっています。
申請の必須要件(基本類型と重点類型)
2024年度の申請の際、必須要件が以下のように示されています。
以下の必須要件を満たした学校が本事業の補助対象(1-1、1-2のいずれかひとつ及び2を満たすことが必要)。 申請要件(令和6年度) また、必須要件の他に加算項目を定める。※特別支援学校高等部は2のみ満たすことで申請可1.情報Ⅱ等の教科・科目の開設等
1−1
情報Ⅱ等※を令和 6 年度においてすでに開設していること(情報Ⅱに相当する内容を含む大学等の科目を履修することを含む)(他校からの遠隔授業を受信しているケースも含む)。また、遅くとも令和 8 年度までに受講生徒数の割合を全体の2割以上とすることを目指すこと。
1−2
情報Ⅱ等の開設等に向けた具体的な検討を遅くとも令和 6 年度中に開始し、必要な準備を進めること。その際、遅くとも令和 8 年度までに開設等するとともに、早期に受講生徒数の割合を全体の 2 割以上とすることを目指すこと。
※情報Ⅱ等
・情報Ⅱ
・数理・データサイエンス・AI の活用を前提とした実践的な学校設定教科・科目及び総合的な探究の時間
・情報Ⅱの内容を含むことにより指導内容を充実させた職業系の教科・科目
2.デジタル環境の整備と教育内容の充実
デジタルを活用した課外活動又は授業を実施するための設備を配備したスペースを整備し、教育内容の充実、探究的な学び・STEAM教育等の
文理横断的な学びの機会の確保、対話的・協働的な学びの充実を図ること
また、申請にあたっては「基本類型」と「重点類型」の2種があり、それぞれ必須要件は共通ですが重点類型の場合「グローバル型」「特色化・魅力化型」「プロフェッショナル型」「プロフェッショナル型(半導体重点枠)」に分化しており、それぞれの類型ごとの要件を満たす取り組みを重点的に行うことで、単価を加算して支援を受けられます。
最後に
2030年には国内のデジタル人材が約79万人不足すると推定されており、政府は対策として人材育成の場を整えようとしています。今回取り上げたDXハイスクールは「文理横断的に実践的な学びを強化」がポイントになると考えています。文系を選択した学生であっても、デジタル・理数分野の学びの機会が増えて未来の選択肢が増えることは本人たちにとっても良い取り組みといえるのではないでしょうか。
参考:文部科学省ホームページ