IT先進国のスウェーデンで脱デジタル教科書が進んでおり、2023年8月からの新学期では本を読む時間や手書きの練習に重点が置かれ、パソコンやタブレット等を利用する時間は削減されています。また、スウェーデンの教育大臣ロッタ・エドホルム氏は幼稚園でデジタル機器の使用を義務付けるという国立教育庁の決定を政府が覆したい意向を発表しており、政府はさらに踏み込み、6歳未満の児童のデジタル学習を完全に廃止する計画だと伝えています。
小学4年生の読解力に関する国際的な評価である国際読解力向上調査(PIRLS)では、2016年から2021年の間にスウェーデンの生徒の読解力が低下していることが明らかになっています。極度にデジタル化された教育体制が基礎スキルの低下につながったのではないかと政治家や専門家が疑問を呈しており、ロッタ・エドホルム大臣がそれに答えた形で脱デジタル化に踏み切ったようです。
ユネスコ「テクノロジーの過度な使用や不適切な使用に注意」
ユネスコが教育現場におけるテクノロジーの使用について分析した「2023年のグローバル教育モニタリングレポート」を2023年7月に発表しています。
この中ではデジタル技術によって、教育及び学習リソースへのアクセスが劇的に増加していることや、一部の教育テクノロジーによって特定の学習が改善されたことを認めていますが、その一方で不適切な場合や、過度な場合には、悪影響を及ぼす可能性があることを示しています。
例として「国際学習到達度調査 (PISA) などの大規模な国際評価データがICT の過度な使用と生徒の成績の間に負の関連があることを示唆している」や、「14 か国ではモバイル デバイスに近づくだけで生徒の注意が散漫になり、学習に悪影響を与えることが判明した」などが挙げられています。
テクノロジーはあくまでインプットの一部であり、配信手段であり、ツールであって教育におけるテクノロジーは学習者と教師を中心に据えるべきとしています。
最後に
スウェーデンのソレントゥナ市では2010年にいち早く一人一台端末を取り入れており、生徒の学力テストにおけるソレントゥナ市のランキングは、全国18位(2009年)から6位(2013年)、4位(2014年)と大きく改善していったという記事もあります。
これらの取り組みの中には教育目標や、目標達成のための施策・行動指針などソフト面も良く練られて計画されていたはずです。どうしてもデジタル技術を教育に取り入れる話になるとソフト面より、ハードウェアの方が目立って話題になっているように思います。
デジタル化が進む中で、改めて紙の教科書の利点が見直されている今回のスウェーデンの動きは、デジタル教育が進む日本や他国にとっても、教育現場のデジタル化とその影響について再考する重要な機会となるかもしれません。
参考:The Guardian
参考:文科省ホームページ-GIGAスクール構想の実現について
参考:ユネスコホームページ